『Nのために』感想
東京の超高層マンションの一室で
野口貴弘と妻・奈央子が死亡した。
その場に居合わせた4人の男女。
さらに過去には
高校時代に起きた成瀬家放火事件。
2つの事件が交錯しながら、物語は進んでいく。
章ごとに語り手が交代し
それぞれの証言によって
現在と過去が行き来しながら
少しずつ事件の真実が明らかになっていく構成。
複雑に入り組んだ人物関係と感情が
丁寧に積み重ねられていく物語だった。
すれ違いが生んだ悲劇
ゴンドラ、シャーペン、ドレッサー、そして異動。
ほんの少しのずれで、人の人生は大きく変わってしまう。
数々のすれ違いが、ただただ悲しい。
親とは
特に辛かったのが、杉下の両親と西崎の母親だ。
親という、本来最も頼れるはずの存在が、
子どもを蔑ろにし、その後の人生までも
追い詰めてしまう描写が、辛くて苦しい。
子どもにとって親は絶対で、
育つ環境は選べない。
この作品はミステリーでありながら
人間の弱さや残酷さがとてもリアルに描かれている。
“Nのために”行動した人たち
それぞれが
自分ではなく、誰かのために行動していたこと。
- 杉下にとっての 成瀬と安藤
- 安藤にとっての 杉下
- 西崎にとっての 奈央子
- 成瀬にとっての 杉下
誰もが
自分ではない誰かのために
行動していた。
つまり彼らは皆
“Nのために”
動いていたのだ。
皮肉な結末
しかし皮肉なことに
自分のことしか考えていなかった
野口夫妻が亡くなる。
野口と奈央子の関係は
共依存のようにも見える。
傍から見れば
異常な関係なのかもしれない。
それでも
本人たちにとっては
純愛だったのだろうか。
『Nのために』読者だけが知る真実
この物語の切なさは
それを
読者だけが理解していること。
登場人物たちは
互いの本当の想いを
完全には知ることがない。
それぞれが
誰かのために選んだ行動。
けれどその愛は
すべて少しずつすれ違っていた。
悲しくもあり
どこか美しい結末だった。
- 人間関係のミステリーが好き
- 切ない物語を読みたい
- 湊かなえ作品が好き
- 読後に考察したくなる本が好き
私にとっての“N”は誰だろう…
あなたにとっての“N”は誰ですか。
「究極の愛とは、罪の共有である。」
彼らが守りたかった、それぞれの「N」。この切ない嘘を、責められますか。
\ 榮倉奈々さんの朗読で /
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