【ネタバレなし】『ルビンの壺が割れた』読後感想
見えているものは本当に真実?
※この記事はネタバレを含みません。
未読の方でも安心して読める感想記事です。
始まりは、ただのメールだった。
Facebookに突然届いた、
元恋人からの連絡。
懐かしい名前。
懐かしい思い出。
少し戸惑いながらも、
そのメールを読み始めた。
けれど――
読み進めるうちに、
小さな違和感が積み重なっていく。
この2人は本当に
愛し合い、結婚するはずだった恋人同士なのか。
この物語の構造
『ルビンの壺が割れた』は、
ほぼすべてがメールのやり取りで進む小説だ。
元恋人同士がネット上で再会する。
最初は、
懐かしい思い出話だった。
学生時代のこと。
昔の恋愛のこと。
少しずつ会話が弾んでいく。
思い出話が続いていく。
けれど。
メールが、
少しずつ形を変えていく。
違和感。
最初は小さい。
でも、確実に大きくなっていく。
言葉の端々に。
記憶の食い違いに。
過去の出来事の解釈の違いに。
どちらが正しいのか。
どちらも正しいのか。
それとも、どちらも正しくないのか。
読んでいるうちに、
だんだんと不穏で落ち着かなくなってくる。
タイトルの意味
この小説のタイトルは
心理学の有名な錯視
「ルビンの壺(Rubin’s vase)」から来ている。
表紙にもある、
「ルビンの壺」。
黒い部分を見ると、
向かい合う二人の顔に。
白い部分を見ると、
一つの壺に見える。
どちらも正しい。
けれど、同時には見えない。
この小説も同じだった。
読みながら、何度も考えた。
どちらの言葉も、
本当のように思える。
でも同時に、どちらも
どこかがおかしい。
ほんの少しの違和感が、
ページをめくるごとに
静かに広がっていく。
この物語は、
派手などんでん返しがあるわけではない。
けれど、
じわじわと読み手の認知を侵食してくる。
読み終えたあとに残るのは
ただ一つの疑問だった。
「結局、何が真実だったのか」
読後
読み終えたあと、
少し怖くなった。
人は、
見たいものを見る。
信じたいものを信じる。
同じ出来事でも、
見る者によって
見え方も意味も
まったく違うものに変わる。
そして一度
「そうだ」と思ってしまうと、
そこから
なかなか抜け出せない。
余韻
この物語の真実は、
最後まで断定されない。
だからこそ、
私は考え続けることになった。
あれは
どちらの言葉が本当だったのか。
それとも、どちらも正しかったのか。
最初から
どちらも間違っていたのか。
少ないページなのに、
深く考えさせられる。
人間の認知の危うさ。
再読して、
また迷う。
同じ出来事でも、
見る者によって
意味は変わってしまう。
それでも、もう一度読み返したくなる。
『ルビンの壺が割れた』は、
短時間で読めるのに
深く考えさせられるミステリー小説でした。
再々読したら…答えは出るのか?
メールの行間に見たものは、本当に「真実」ですか。
読後、きっともう一度最初から読み返したくなる一冊です。


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