『ユリゴコロ』感想|もし被害者が善良な人だったら?

読書感想
『ユリゴコロ』
著者
沼田まほかる
出版
2014年
ジャンル
ミステリー / 人間ドラマ
テーマ
罪・愛・拠り所
キーワード
衝動 / ユリゴコロ / 愛

『ユリゴコロ』感想|愛か狂気か?

『ユリゴコロ』を読み終えて、
読後に残ったのは恐怖よりもモヤモヤでした。

これは愛の物語なのか、それとも恐怖の物語なのか。

しばらく考えてしまった。

殺人衝動を抑えられない「私」が
「ユリゴコロ」を求め続けた半生を描いた物語です。
読み進めるほどに人の心の闇と、
倫理の曖昧さを突きつけられる作品でした。

あらすじ

母の事故死、父の末期癌、そして婚約者の失踪。
短期間に不幸が重なった主人公は、
実家でひっそりと仕舞われていた4冊のノートを見つけます。

タイトルは『ユリゴコロ』

そこには、殺人衝動を抑えられない「私」が、
自分の心の空白を埋めるために人を殺していく
日記のような記録が綴られていました。

それは創作なのか、それとも現実なのか。
残酷な内容の日記を読み進めるうちに、
主人公は少しずつその秘密に近づいていきます。

日記の内容と現在の出来事が交錯しながら、
物語は真相へと向かいます。


文字から漂うあの緊迫感を、まずは映像で感じてみてください。

「ユリゴコロ」とは何なのか

作中で語られる「ユリゴコロ」とは、
みんなが持っているはずの心の拠り所のようなもの。

しかし、「私」にはそれがありません。

「みんなが持っているらしいもの」を自分も手に入れたい。
その空白を埋めることができず、彼女は衝動的に殺人を繰り返してしまいます。

そんな「私」が「アナタ」と出会い、初めて本当の愛を知ります。
そして、衝動的な殺人は、大切な人を守るための殺人へと変わっていきます。

読んでいて息苦しくなった側溝のエピソード

読んでいて一番辛かったのが、側溝のエピソードです。

ページをめくりながら、思わず息苦しくなるような感覚になりました。
まさかこの出来事が、後に運命的な意味を持つとは、
その時は想像もしていませんでした。

この物語は残酷な出来事がいくつも描かれますが、
この場面は特に読んでいて苦しかったです。

特に可哀想だと思ったのは英実子

作中にはさまざまな人物が登場しますが、
個人的に一番可哀想だと感じたのは英実子でした。

彼女の人生は多くを語られるわけではありません。
それでも、その境遇を想像するとやりきれない気持ちになります。

姉の代わりに背負うことになった人生。
それでも、彼女の想いが報われることはありません。

サラッと書かれているからこそ、余計に辛いです。

「アナタ」の気持ちが最後までわからない

そしてもう一つ、
最後まで理解できなかったのが「アナタ」の気持ちです。

側溝の出来事で人生を狂わされた彼なのに、生涯「私」を受け入れ続けます。

それは同情なのだろうか。
それとも優しさなのだろうか。
読み終えても、私にはまだ答えが見えません。

読後に残ったモヤモヤ

「私」は衝動的に多くの人を殺してきました。

他人と分かり合えず、生きづらい人生でしたが、
人を愛し、その人の妻になり、母になります。
長い間離れてはいたけれど、最終的には愛する人と結ばれます。
物語としては救いのある結末だと思います。

でも、どうしてもモヤモヤしてしまう。

例えば、最後の殺人。
結果的に「私」は男を殺し、大切な人は救われます。

殺された男がろくでなしだったから、
結果として「良かった」と感じる部分もあります。

でも、もし被害者が善良な人だったらどうだろう。

そう考えると、この結末を素直に
「真実の愛が成就した良い話」として受け止めることができませんでした。

小説だからこそ読める物語

現実であれば絶対に許されないことばかりです。

それでも、人の孤独や心の闇、言葉にできない葛藤をここまで描けて、
それを覗けるのは小説だからこそだと思います。

読後、恐怖よりもモヤモヤが残る。
そんな不思議な余韻を残す物語でした。


美しすぎる狂気か。それとも、残酷すぎる愛か。
倫理観が静かに、激しく揺さぶられます。

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