小説『スワイプ厳禁』&『閲覧厳禁』感想&考察|スマホを持つ手が震えるホラー体験

読書感想

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『スワイプ厳禁』『閲覧厳禁』
著者
知念実希人
出版
双葉社(2025年/2025年)
頁数
136ページ/304ページ
ジャンル
ミステリー/ホラー
読後感
ザワザワ/不穏
キーワード
怪異/スマホ/恐怖/都市伝説

こんな人におすすめの一冊

  • 実話怪談やネット掲示板のまとめが好き
  • 「関わってはいけない」禁忌に惹かれる人
  • 湿り気のある日本の伝承ホラーに触れたい人
  • 現代ホラーを味わいたい人

スマホの衝撃


スワイプ厳禁 変死した大学生のスマホ

スマホで怪異に巻き込まれる
体験型ホラー

レポート報告


閲覧厳禁 猟奇殺人犯の精神鑑定報告書

インタビュー他
資料・証拠など事件記録

「このスマホ、絶対に見てはいけない」という警告

本を読んでいて、自分のスマホが怖くなった。
通知が来るたびに一瞬だけ躊躇するようになった。画面のロックを解除する前に、少し息を整えてしまう。これは、フィクションの話を読んだだけなのに——そういう「日常への侵食」こそが、この二冊の狙いなのかもしれない。

知念実希人さんの『スワイプ厳禁 変死した大学生のスマホ』と『閲覧厳禁 猟奇殺人犯の精神鑑定報告書』は、「対となる作品」として発表された。

本作は著者初のモキュメンタリー・ホラーへの挑戦であり、これまでの医療ミステリーとは明確に異なる領域に踏み込んでいる。

『スワイプ厳禁 変死した大学生のスマホ』——スマホという形式の革命

あらすじ

大学生の一色和馬は、就活のために「都市伝説調査バイト」を引き受ける。対象は“ドウメキの街”。
だが調査を進めるうちに、自身のスマホ画面に不可解なものが映り込み始める。

スマホ本という設計

本書の最大の特徴は、スマホサイズの装丁と、右ページに「画面」、左ページに「語り」を配置する構造にある。
読者は物語を読むのではなく、“スマホ画面を操作する感覚”そのものに巻き込まれる。

読了体験の二重性

ページ数は少なく短時間で読める。しかし読後に残る違和感は長い。
手軽部読み終えられる「軽さ」と内容の「重さ」が逆転する構造が、この作品の恐怖の特徴でもある。

『閲覧厳禁 猟奇殺人犯の精神鑑定報告書』——記録という恐怖

あらすじ

多摩市で起きた猟奇殺人事件。容疑者はフリーライター・八重樫信也。
精神鑑定医・上原香澄が事件記録と面談を重ねるうち、不可解な都市伝説“ドウメキ”の存在へと辿り着く。

インタビュー形式のリアリティ

本作はインタビュー・記録・資料の寄せ集めとして構成される。
それにより「これはフィクションではなく、実際の事件記録なのではないか」という錯覚が生まれる。

ドウメキという怪異

二作品に共通する存在が“ドウメキ”である。
それは単なる怪物としての存在ではなく、「見られること」そのものの恐怖を象徴している。

スマホを通して常に他者と接続される現代において、「視線」はすでに外部からのものではなく、内部に侵入している。

スマホは恐怖の媒体である

スマホは現代人に最も近いデバイスであり、同時に最もプライベートな領域でもある。
その画面に“何かが映る”という設定は、従来のホラーよりも個人の生活に密着している。

見る/見られる構造

本作の恐怖は一貫して「主客反転」にあるのではないか。

こちらが見ているつもりが、気付かぬうちにこちらが見られている。

観察する側が、いつの間にか観察される側へと転換する構造だ。

モキュメンタリーの本質

記録形式は冷静な「客観性」を装いながら、むしろ不安を増幅させる。
現実とフィクションの境界が曖昧になり、自身の客観性が脅かされるような不安定な気持ち。

日常が侵食される読書体験

この二作品の恐怖は、”ドウメキ”という怪異そのものではない。
それは「日常的に使っているものが、そのまま恐怖へ転化する」という構造にある。

読了後、スマホを開く手がわずかに止まる——そんな瞬間こそが、この作品の到達点ではないか。

※読む順番は『スワイプ厳禁』→『閲覧厳禁』推奨。

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