「罪の余白」|裁かれない悪意に私はどう向き合うか

読書感想

——『罪の余白』


物語の輪郭

大学教授・安藤は、最愛の娘・加奈を校舎からの転落事故で失う。
だがその死の裏には、同級生・咲の存在があった。
冷静で計算高い咲と、真実を追い詰めようとする父。
二人の間で繰り広げられるのは、救いのない心理戦だった。

——この「余白」に、あなたは何を見ますか。


冒頭から辛い。

落下していく加奈の心の声。
「どうしよう、お父さん」

学校という狭く閉鎖的な、
空気を読むことが正解とされる世界。
あの酷い罰ゲーム。
助けを求めることも、空気を壊す行為になる。

あの息苦しさは、きっと誰もが大なり小なり どこかで経験していると思う。


早苗さんは、嘘を見抜けないし、嘘もつけない。
いわゆる“空気が読めない人”。
でも、だからこそ誠実だと思う。

一方で咲は、真逆の存在。

恵まれた容姿。
恵まれた環境。
けれど感謝はなく、他人を見下し、
人を道具のように利用する冷たさがある。
平気で嘘をつき、裏切る。

まず、その性格の悪さにムカつき、
人を操る巧妙さに嫌悪し、
それが周囲にバレないことに腹が立ち、
最後まで反省しない姿勢に「やっぱりな」と呆れて諦めた。

でも一番怖いのは、
それが「特別な悪」ではなく、
現実にもどこかにいそうだと感じてしまうことだった。

そして気づく。
私は咲に怒っているのではなく、
こういう人が報われてしまう現実に怒っているのだと。

外見や環境の恵まれ方と、人間の価値は別物。

今さらだけど、それを強烈に感じた。


そして何より辛いのは、
咲は裁かれないし、反省もしないこと。

物語の中でさえ、正義は必ずしも勝たない。

スッキリしない。
モヤモヤだけが残る。

救われない。
だからこそ、リアルだった。

「正義」と「現実」は一致しない。


物語が「自分ごと」になった瞬間

読み進めるうちに、目が止まった人物。

真帆。

自信がない。
自分の価値がわからない。
誰かに選ばれることで安心する。

悪意はない。
でも芯もない。
いわゆる、大多数の「普通」の女の子。

咲のような強い悪意は、
それを支える“普通の子たち”がいてこそ成立する。

悪意が成立しない土壌を育てる方が、本質的なのかもしれない。


私ができること

子どもたちには、自尊心と思いやりを。
誰かに選ばれなくても、自分で自分を肯定できる強さを。

そして大人である私も。
悪意ある人に出会ったとき、迎合しない。
自分も他人も大切にする姿勢を。

私は変われる。
その姿勢は、きっと誰かに伝わる。

物語はスッキリしなかった。
でも、考えるきっかけをくれた。

語り合える相手がいて、
こうして言葉に残せる場所がある。

だから私は、きっと恵まれていると思う。

正義が勝つとは限らない、この救いようのないモヤモヤ。読み終えた後、誰かと語り合いたくなる一冊です。


同じく愛と罪をテーマにした作品として 『ぼくのメジャースプーン』も印象的でした。

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