及川光博 30周年☆ワンマンショーツアー2026『TAKE IT ROSY!』大阪公演|初参泉のベイベーが見た夜

音楽感想

今回のワンマンショー

及川光博 ワンマンショーツアー2026『TAKE IT ROSY!』
デビュー30周年記念盤『TAKE IT ROSY!』(2026年5月6日発売/約2年ぶり・オリジナルアルバム通算21作目)を携えたツアー
2026年6月27日(土)・28日(日) オリックス劇場

きっかけは、Xのタイムラインでした。フォローしているわけでもないどなたかのポストが流れてきて、「及川光博さんの30周年記念ライブ、東京ガーデンシアターを満員にしたい!」というような内容でした。それから何度か違う方のポストでも同じような内容を目にしているうちに、「ファンに愛されてるんだなぁ…」と、何となく興味が出てきました。どの方も文章がやたら幸せそうで、愛が溢れていて、すごく楽しそうで。

及川光博さんについて私が知っていたのは、ドラマで見かける俳優さんという程度。歌手活動をされていることも、失礼ですが知りませんでしたので、どんなライブなのかは想像もつきませんでした。

東京ガーデンシアターには行けない。それなのに気になり続けて、友達に連絡してチケットを取り、6月27日、オリックス劇場に行きました。しかもこの日は台風の接近で開催が危ぶまれていた日。前日から公式が「状況を注視している」と告知を出していて、当日の朝に「予定どおり開催します」というアナウンスが出ました。そんな経緯もあって、会場に着いた時点で何だか少し高揚していた気がします。

会場に貼られていたポスターには、27日と28日、両方に「SOLD OUT」の判が押されていました。会場は違いますが、「満員にしたい」という誰かの願いから始まってここまで来た人間としては、この赤い判が妙に嬉しかったです。

及川光博ワンマンショーツアー2026「TAKE IT ROSY!」オリックス劇場公演のポスター
オリックス劇場に貼られていたツアーポスター。両日ともSOLD OUTの判

結論から書くと、想像していたものとは全然違いました。以下、初参泉の視点からの感想と、なぜこれがこんなに充実した時間になったのかについての考察を、3つの角度から書いてみたいです。あくまで一度きりの体験からの推測なので、長年通われている方から見れば的外れな部分もあると思いますが。そこは大目に見てください。

ちなみにこの界隈では、「参戦」ではなく「参泉」と書くそうです。沼ではなく泉に浸かる、という発想なのだとか。ご本人もトークの中で使うほど定着した言い回しだそうで、この言葉づかいひとつでも、場の空気がなんとなく伝わってきます。

今回のセットリスト。

01. 30周年のマーチ(入場曲)
02. スターダスト・カーニバル
03. 三日月姫
04. Shinin’ Star
05. デンジャラス・ビューティー
06. キミハキレイ
07. FAKE IN LOVE
08. 君は薔薇より美しい(衣装がえ)
09. タカラモノ
10. ココロノヤミ
11. 明日も
12. ファンキー☆ミュージック
休憩
13. 30周年のマーチ〜合唱〜
愛と哲学の小部屋
14. 心配性エレジー
15. 死んでもいい
16. コングラッチュレーション!!
<アンコール>
17. 君はトレビアン
18. バラ色の人生
19. 今夜、桃色クラブで。
退場曲. Wish

※抜けてたり、間違ってたらごめんなさい。

【1】「ライブ」ではなく「ワンマンショー」

まず驚いたのが、歌だけで成立させていないことでした。歌があり、ダンスがあり、衣装があり、照明があり、トークがある。バンド演奏を聴かせる時間と、ダンスや衣装・セットなど視覚で押し切る時間が、きちんと配分されていました。

この形式を、ミッチーは一貫して「ライブ」ではなく「ワンマンショー」と呼んでいるそうです。スローな曲からアップテンポな曲、そして合唱まで。激しく踊りながらも歌いきる場面を目の当たりにして、この呼び方は謙遜でも気取りでもなく、正確な自己申告なのだと思いました。

そしてこれは、一人で立っているステージではありませんでした。バックバンド、コーラス、ダンサーからなるチームには「エンドルフィンズ」という名前がついていて、メンバー紹介では客席から次々に声援が上がります。誰が何を担当しているのかを、みなさんちゃんとご存知なんですね。ソロアーティストの公演というより、毎年同じ座組で続けている劇団の公演を見ているような感覚に近かったです。

極めつけは「執事のチエホフさん」でした。進行を支える役回りの方なのですが、裏方という扱いではなく、ショーの中にきちんと居場所がある。しかも激しい曲の最中、舞台袖でチエホフさんがものすごい速さでペンライトを振っているのが見えて、思わず注目してしまいました。あの熱量は仕事ではないと思います。長く一緒にやってきた人同士の空気が、ああいうところに出るのでしょうね。

音楽に詳しいわけではない私でも、ディスコやファンクを思わせるリズムの強さははっきり感じました。「王子様」というビジュアルの印象が先に立つぶん、鳴っている音とのギャップに驚かされました。キャラクターは入口で、その奥にはきちんと音楽がある。この二層構造が、30年続いている人気の理由のひとつなのではないかと感じました。

そしてもう一つ、照明も曲間も、客席が動くことを前提に組まれているように感じました。座って鑑賞する設計にはなっていない。だから初参泉でも、途中から自然と体が動いてしまう。動いてしまえば、もう部外者ではいられません。

【2】お約束だらけなのに、初見が置いていかれない

ミッチーのワンマンショーには、独特の作法がかなりあります。ペンライトは曲によって色を変える。ポンポンを振る曲がある。「遠隔ハグ」をはじめとした、掛け声に合わせた決めポーズがある。コール&レスポンスも多い。

普通に考えれば、こういう文化が濃い現場ほど新規は入りづらいはずです。何も知らずに行くと、周りだけが正解を知っている状況になりがちだから。だけど実際は、まったくそうはなりませんでした。

あとから考えると理由はたぶん二つ。ひとつは、ステージ側が毎回ちゃんと提示してくれること。色にしてもポーズにしても、本人や演出から明確なサジェストがあるので、知らなくてもその場で追いつける。強制でもないので、様子を見ていてもいい。「わかっている人だけが楽しめる」構造ではありませんでした。

もうひとつは、チケットの設計。このツアーには指定席(9,900円)のほかに、価格を抑えた「ゴーゴー!シート」(5,500円)や、最上階の最後列にあたる「サイコー!列シート」(3,300円)といった座席区分が用意されていたようです。名前からしてユーモアがありますが、要するに「ちょっと気になる人が試しに来られる値段の席」が最初から確保されているということなのかと思います。興味を持った人間が、迷いながらもボタンを押せる、気軽に足を運べる、そんな気配りがありました。ただし全会場共通ではないようなので、行きたい公演ごとの確認は必要そうですが。

30周年という節目のツアーで、この間口の広さを維持しているのは、けっこうすごいことではないかと思います。周年公演は内向きになりやすいものだと思うので。

【3】「愛と哲学の小部屋」が果たしている役割

個人的に、この日いちばん唸ったのがこのコーナーでした。ファンの間では「愛哲」と略されるそうです。事前に客席から集めた悩みや質問に、ミッチーがその場で答えていきます。ご本人は「ほぼ大喜利」と表現されているそうですが、実際に聴いてみると、笑わせながらもちゃんと答えられている場面が何度もありました。

真面目な相談からクスリと笑えるもの、答えに窮するようなものまで、質問にはかなりの幅がありました。そのすべてに、ミッチーが絶妙なトーンで即興で答えていきます。笑いに寄せすぎて雑にならないし、真剣に受け止めすぎて重くもならない。この加減が本当にお上手で、会場全体がゆるく笑い続けている、愛の溢れた時間でした。

ここで面白いのは、コーナーの前後で「王子様」の解像度が変わることでした。歌やダンスでは、完璧に作り込まれた存在として立っている。それなのに愛哲では、素の思考や過去の話、共演者のエピソードなどが、ふっと顔を出す。ファンタジーの内側に一瞬だけ生身が覗きます。

この振り幅こそが、長い年月愛されている魅力なのではないかと思いました。キャラクターだけなら、いつか飽きが来るかもしれない。生身だけなら、非日常にはならない。両方を行き来し続けることで、憧れと親しみが同時に成立する。しかも当日観客の側から出した質問に答えるという形式なので、関係が一方通行になりません。「向こうもこちらを見てくれている」という実感が、毎回更新されていく仕組みなのだと思います。

もちろん、これは一度観ただけの私の勝手な読みです。長く通われている方にとっては、もっと別の意味を持つ時間なのかもしれません。

古参が、驚くほど親切な話

今回いちばん心に残っているのは、実は古参のベイベーさん方のことかもしれません。明らかに慣れている方たちが、実に温かい。Xでもそうでしたが、会場でも同じでした。ポンポンの使い方や、この曲は何色といったことを、こちらが聞く前から教えてくださる。初心者ベイベーというだけで歓迎される空気が、はっきりとありました。

ファン歴の長さがマウントの材料にならず、案内役に転化している現場は、正直そう多くないと思います。なぜこうなっているのか考えてみましたが、たぶんステージ側の姿勢が影響しているのでしょう。本人がずっと間口を開けたまま続けてきた場所では、客席の側も同じ振る舞いを覚えていく。文化は上から降りてくるのかなと、勝手に納得してみたりしました。

これも、たまたま私がそう感じただけだった可能性も十分にあります。ただ少なくとも、初めて行く人が心細い思いをしにくい場所だったことは書いておきたいです。

古参 vs 新規の構図は割とよく見られるので、こんな穏やかな空気感は素敵だなと思いました。

バラを咲かせるのは、たぶん客席

アルバムのタイトルにもなっている「TAKE IT ROSY」という言葉。直訳すれば「バラ色でいこう」くらいの意味でしょうか。3時間近くこの泉に浸かって思ったのは、この「バラ色」はステージから配られるものではなくて、客席が持ち寄ってステージで成立させるものらしい、ということ。ペンライトの色も、ポンポンも、掛け声も、全部こちらが動かないと起きません。観客も仕事をする前提で組まれたショーです。

YouTubeを見て練習したポンポン曲「死んでもいい」と「コングラッチュレーション!!」ステージだけでなく、ホール全体がひとつになったみたいな一体感と達成感でした。だから終演後、あんなに疲れているのに満たされていたのだと思います。見せてもらったのではなく、自分も参加したという実感がある。Xで見かけたあのポストの、妙に幸せそうな文章の理由が、ようやくわかった気がしました。

及川光博さん、デビュー30周年おめでとうございます。俳優としてのイメージしかなかったけど、ひょんなことから参泉して、あんなに踊りまくって歌いまくって、息もあがらないのに公演時点で56歳ということに驚愕。話も上手で面白いし、賢い方なんだろうなと思います。

お土産に買って帰ったのは「ミッチーナポリタン」でした。フォトカード付きのナポリタンソース。物販にこれが並んでいる時点で、この方のショーの性格がよく出ていると思います。笑わせにきているのか本気なのかの判定が、最後まで気持ちよくつきません。

お土産に購入した「ミッチーナポリタン」のパッケージ(フォトカード付き)
お土産のミッチーナポリタン。フォトカード付き

一緒に参泉した友人はBTSのARMYですが、コール&レスポンスに踊りに、2人で目一杯楽しみました。

もし今この記事を読んでいる方の中に、私と同じように「気になっているけど初めてだから」とためらっている方がいたら。大丈夫だと思う、と伝えたいです。何も知らなくても、その場で教えてもらえるし、初心者ベイベーの参泉を、すごく歓迎してもらえるから。

追記:その後の、おめでたいニュース

この記事を書いているあいだに、発表がありました。2026年8月8日、及川さんの公式サイトを通じて、ご結婚と、新しい命を授かっているというご報告。令和8年8月8日という、8が並ぶ日でした。お相手は一般の方で、それ以上の詳細は公表しないとのことですので、私もここまでにしておきます。

このニュースを知って思い出したのは、愛哲のことでした。完璧に作り込まれた「王子様」の内側に、ちゃんと生身の人生がある。その二つを30年行き来し続けてきた方の、31年目が始まったのだなと思いました。

小さなベイベーの誕生も楽しみですね。
おめでとうございます。

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